自然な家の心地よさに欠かせない「断熱」。効率よく断熱するためのポイント
- Kawabe Fumi
- 2024年3月25日
- 読了時間: 9分
カテゴリー, 暖かくそして涼しく/断熱の役割
木の家・自然な家で、あなたの暮らしを楽しみませんか?
東京・多摩エリアの「つくり家工務店」です。
今回のテーマは「断熱とは?」です。
最近は省エネの推進とともに再び注目されている高断熱高気密ですが、
「なぜ住宅には断熱が必要なの?」「断熱ってどういうこと?」
と疑問に思ったことはありませんか?
私も勉強するまでは、たくさんの誤解をしていました。
以前は、「家を包む暖房器具ぐらい」にしか考えてなかったですから……(苦笑)。
「ややこしいからいいや!」と考える人も多いかもしれませんが、断熱気密がざっくりとでもわかると、「家の機能として何が必要なのか?」が判断できます。
あるいは、家づくりのベースになる知識が得られるので、今後の家づくりがスムーズになると思います。
「断熱」のポイント3つをまずは押さえましょう
まずは、「断熱とは?」のポイントを3つ挙げてみますね。
1.熱の移動を抑えます
まず断熱は暖房器具ではありません。
結果的には暖かくなるのですが(冬は)、その役割は空気の熱の移動を抑えることです。
空気には、『暖かい空気は冷たい空気のほうへ流れる』という性質があります。
冬の家では室内の暖気が外に逃げようとするわけです。
これを抑えてあげないと、いつまでも暖かくならないですよね。
一番わかりやすい例が、ダウンジャケットです。
ジャケットの中にあるダウンが断熱の役目をして、内側の熱を外に逃さないようにしています。ダウンジャケットが熱を発生させているわけではないですよね。
ダウンジャケットはあなた自らが発する熱を、家の場合は暖房器具で暖めた熱を、外に逃がさないようにしている。これが「断熱」です。
2.冬だけでなく夏も働いてます
断熱というと冬だけのこと、あるいは暖かくすることをイメージしてる方が多いかもしれません。
しかし、前述したように、断熱とは「空気の熱の移動を抑えること」。夏もしっかり断熱は働いているのです。
ただし、夏の場合は空気の進もうとする方向が逆転します。
外気の熱い空気を室内に通さないようにしてくれるのです。
先ほどはダウンジャケットをたとえにしたので、「ダウンジャケットは夏は着ないよ」と疑問を持つ方もいるかもしれません。
ダウンジャケットはあなたに密着してるので、あなたの体温に対応してしまいますが、家の場合は、あなたは断熱材からは十分に離れているし、冷房で涼しくした冷気をキープしようとするのでダウンジャケットのようなことにはならないのです。
つまり断熱とは、「暖かくも涼しくも、気温をキープし続けますよ」ということです。
冬はダウンジャケット、夏はクーラーボックスをイメージしてみたらわかりやすいかもしれませんね。
3.全体を包むことで効果が出ます
このあとお話する予定の気密の話と関連することなのですが、これもダウンジャケットを例に出したいと思います。
あなたは寒い時、ダウンジャケットの正面のファスナーを首元まで閉めますか?
それともファスナーを閉めませんか?
当然閉めますよね。
クーラーボックスでも同じです。
蓋を開けっ放しにしてたら、氷が解けて冷たくなくなってしまいます。
そうならないように、なるべくすぐに蓋を閉じてロックして中を密封しますよね。
隙間なく断熱材で覆われていることによって、はじめて断熱の効果が十分に発揮されるということです。
家についても外気に接する基礎(床)、外壁、屋根(天井)を断熱材で覆うわけですが、外観ができるだけシンプルなほうが施工にムリがなく、断熱の効果が得られやすいと言えるでしょう。
断熱材も、あっちこっち隙間だらけでは効果が半減してしまい、せっかく入れたのにもったいないということにもなってしまいます。
隠れて見えなくなる部分ですが、しっかり施工しなければならないところでもあります。
しっかり断熱することで得られるメリットは?
「家じゅうを断熱すればいいよね」というのは、なんとなく理解していただけたかと思います。
しかし、「断熱ってそんなに必要なの?」「これまでのように冷暖房をガンガン使えば大丈夫じゃない?」と感じる方もいるかもしれません。
このような発想で、これまでの日本の住宅は断熱に頼らず、非効率な方法で過ごしてきました。それは昨今叫ばれている省エネの流れに全く逆行してるし、気づかぬうちに人体にも大きな影響を与えていることがわかってきました。
ここからは、「断熱するとこれだけ生活が変わる」というメリットを4つ紹介しますね。
1.家じゅう温度のムラがなくなる
これまでの住宅では部屋ごとに冷暖房をすることで温度を保ってきました。そのため、部屋はそれなりにあったかいけど、廊下に出たら極寒、なんてことが普通でした。
しかし断熱をしっかりやれば、1つ、2つのエアコンでも家全体を暖めることができ、温度差をなくすことができます。
極端な話、気温に関しては室内の扉を開放しても生活できてしまうのです。
2.ヒートショックからの解放
家じゅうの温度差がなくなることで、まずカラダにストレスを感じなくなります。
体験されたことがあるかもしれませんが、冬になるとお風呂に行くのにちょっとした勇気が必要ではありませんでしたか?
暖かい部屋から寒い廊下、脱衣室。そして熱いお風呂に入ったら、どれだけ気温と共に血圧が乱高下するでしょう?
これがヒートショックの原因です。
しっかり断熱をすると、このストレス(と危険)がなくなります。
3.冷暖房費の節約
隙間なく断熱材を入れているので、熱が外に逃げにくく、外からも入りにくい状態になります。そのため、短い時間で希望の温度にすることができるし、最小限の熱源で一定の温度に保ちやすくすることができます。
それは当然、光熱費の節約につながりますよね。
4.結露やカビの発生を抑える
結露は室内外で温度差があると発生します。また、結露はカビの原因にもなります。
結露が増えればカビの発生も増えるのです。
しかし、断熱によって外壁より内側は温度差がなくなるので、室内の結露の発生は減るのです。
デメリットはないの?
家じゅうの温度差がなくなるし、ヒートショックや結露・カビの心配もない。お財布にも優しい。こんなにメリットばかりでデメリットはないの?と、気になる方もいるでしょう。
デメリットと言えるのは、コストです。
しっかり断熱施工すると、これまでの中途半端な断熱と比べたら最初にかかるイニシャルコストは確かにかかります。
しかし、メリットのところでもお話したように、断熱をしっかりやれば、ランニングコストは劇的に減ります。
短期的にはデメリットと言えばその通りなのですが、考え方次第ではメリットにもなりうるのです。
断熱をしっかり行うことで結露やカビが抑えられ、家を長持ちさせることができます。
家が長持ちすればするほど、断熱にかかるコストと光熱費にかかるコストの合計額は、断熱をさほど重視しない家のそれと比べると変わらなくなり、いずれ逆転するのです。
断熱が不十分だった今までの家は、無意識のうちに我慢して暮らしていたのです。
これからは、賢く快適に暮らすことを重視してみませんか?
断熱で特に重視したいのは、窓の断熱です
ここまでは、断熱のポイントとメリット・デメリットをお話してきました。
最後にお伝えしたいのが、窓の断熱のことです。
家の断熱で特に重視したいのが、窓なんです。
なぜかといいますと、冬の室内で暖めた空気の50%以上が、「窓から外に逃げていく」と言われているからです。
ですから、壁をしっかり断熱しても、窓を断熱しないと意味がないのです。
窓の断熱性能を上げると、てきめんに効果を感じることができます。
特にリフォームでは、内窓を使えばわりと容易に断熱性能を上げることができるので、窓から断熱を始めることをお勧めしています。
ここでは、窓でどのようにして断熱をするのか、ポイントをいくつか挙げてみます。
1.断熱性能の高い窓にする
まずはここから考えますよね。
断熱性能の高い窓にするには2種類の方法があります。
①新規に高い断熱性能を有した断熱窓を取り付ける方法
②既存の窓の内側に二重に内窓を取り付ける方法
リフォームでは特に、解体改修を要しない内窓の設置がコストもかからず、取り掛かりやすいですね。
断熱窓の種類もさまざまです。
次のような断熱性能を上げるための加工や製法があります。
ガラスの枚数
ガラスを複層にすることで、間の空気を断熱材として利用することができます。
ペアガラス(2枚)トリプルガラス(3枚)
ガラス間にガスを封入
空気よりもさらに断熱性の高いガスを充填する方法です。
真空、クリプトンガス、アルゴンガス
Low-Eガラス
ガラスの内面に蒸着という方法で金属を吹き付けたガラスをLow-Eガラスといいます。
このガラスは放射という熱の伝わりを抑える機能があり、断熱、遮熱に効果を発揮
します。
こうしてガラスの断熱効果を上げることができたのですが、断熱窓としては不十分です。ガラスを囲っている枠の断熱効果を上げなければ意味がありません。
枠の材質を熱が伝わりにくいものにする
日本で主流のアルミサッシは一番熱が伝わりやすい素材です。
実は、先進国でアルミサッシが主流なのは日本くらい。
断熱性の高い木製、樹脂にすることで結露の発生も抑えられます。
2.方角によって窓面積を変える
基本的には日射取得があまり期待できない北、そして日射による温度変化が激しい東、西面はあまり窓を設けないようにします。
一方で南面は、冬の日射取得が期待できるので、大きく窓面積をとります。
3.窓をつぶす(リフォーム)
これはリフォームでの話になってしまうのですが、南面以外の窓については、必要性を感じないならばつぶしてしまうのも一つの手です。
内外壁面の補修は必要にはなりますが、断熱材を入れて壁にしてしまえば断熱効果は上がるし、コストも抑えられます。
これらの方法をバランスよく総合的に判断して、窓を決めていきます。
いかがでしたか?
健康に快適に過ごせて、省エネにもつながる断熱のお話をお伝えしました。
木をふんだんに使った自然の家では、家を長持ちさせることにもつながりますので、家づくりの予算の中に組み入れることを検討してみてください。
コメント